区民置き去りの区長の国交省訪問。羽田新飛行ルートによる被害軽減は”ルート撤回”でしかできない!

区民への説明や、情報提供も無し。区長の掲げる”区民とともに進める品川区政”はどこへ?

2023年12月1日、森澤品川区長が国土交通省に、先に実施された羽田新飛行ルートに関する区民アンケート結果と要望書を提出しました。
区長の突然の国交省訪問は、訪問の目的、国交省に提出する要望書の内容、また、それらにかかる手続き等も含め、何一つ明らかにされないままにおこなわれました。

そもそも区民アンケートは、≪品川区民を対象≫に、≪品川区民の税金≫で実施されたものです。
本来であれば、まず先に区民に対しアンケート結果を示すことが必要です。
かつ、政策決定の場である議会へは、アンケート結果と共に、アンケートの結果を受けた区の見解を示すべきではないでしょうか。
”区民の声を聞きながら、アンケート結果の共有とともに、区の見解を議会で議論し、そのうえで国交省に、主権者区民のアンケート結果を踏まえた区としての意見を届けるー”、という真っ当で公正な、一連の手続きを経るべきであったと生活者ネットワークは考えます。


しかし、そのような本来あるべき手続きを省略して、区長は、区民への結果報告や説明責任を果たさないまま、国交省へアンケート結果の概要を鷲掴みにし、議会との共有も承認もないままに要望書を提出する事態となっています。

区長が常に発信されており、区長のHPでも冒頭に掲げている”区民とともに進める品川区政”とは、真逆の品川区政が現在、進んでいます。

先日も、「男女共同参画推進フォーラム2023」で開催されるはずであった田嶋陽子さんの講演が、区民への説明は一切無いまま、突然、中止となったばかりです。
この事例でも、品川区は区民からの「なぜ、中止になったのか?」という疑問に答えは無く、未だに説明責任は果たされていません。

区が真っ当で公正な手続きを踏まえない事態が起きている中で、今議会では、品川区組織条例の一部を改正する条例が上程されています。
区長権限をさらに強める”根拠”となりうる条例改定ではないかと危惧します。

 

■区長の国交省訪問までの品川区・議会の状況(時系列)

@2023年11月28日(火)(17時過ぎ~)
「羽田問題議連しながわ」(以下、羽田議連)の定例会が開催される。
区民アンケート結果が示されることが共有された。
結果の公表方法などを区へ確認することを決定する。

@11月29日(水)(14時過ぎ)
羽田議連メンバーが広報広聴課等へ問い合わせ。
この時点で区は、アンケート集計に時間がかかっているため、現時点でアンケート結果の報告を記者会見等で行うことは無いと告げる。

@11月30日(木)(15時過ぎ)
区が、前日(29日)に羽田議連メンバーへ説明していたことが翻る。
”区長が国交省にアンケート結果を踏まえた要望書を持って訪問へ行く”ことが、問い合わせをしていた羽田議連メンバーに告げられる。

@11月30日(木)(15時半過ぎ)
羽田新飛行ルートにかかる議論が行われる品川区議会の建設委員会のメンバーに、区から”国交省への要望提出に向けた説明を13時から行う”という連絡が入る。
併せて、翌日の12月1日の午前中に区としてプレス発表を行うこと、17時からは区長のぶらさがり会見が行われる、との情報が入る。

しかし、この時点でも、区長が国交省へ携行する、区民が答えたアンケート結果は建設委員会に示されておらず、もちろん、区民への結果報告は無い。


区長が国交省へ行く際に、①いつ②誰と③国交省の誰と面会するのか④要望提出の手段(書面か、口頭か等)⑤要望項目等の決定手続き⑥国交省への訪問後の区民への説明の有無⑦建設委員への説明は、誰が行うのか?区長の出席はあるのか??ーーなども、全く明らかになっていない。

アンケート結果も不明、国交省訪問の目的も示されないまま、羽田議連の中でも情報は深夜まで錯綜。情報が錯綜する中、羽田議連メンバーから、羽田新飛行ルートに反対する市民・市民団体へ、現状等について情報共有が行われる。

@12月1日(金)

(午前)区長の記者会見とプレス発表等が行われるであろう時間が明らかにされず、情報が錯綜。区長が国交省を訪問するであろう時間も、この時点でも明らかになっていない。
(13時~)建設委員会の委員への説明が行われる。
建設委員への「説明」であり、公式なものでは無いため、委員への説明は非公開。議事録も無し。もちろん、区民傍聴も無い。
説明資料として示されたのは、アンケート結果のみ。かつ、当該資料は、区のプレス発表がある17時以降までは伏せるようにと、区は、委員へ求めた。
さらに、残念なことに、委員への説明の中で、区長がどのような要望を持って国交省に向かうのか、にかかる説明は無く、16時以降に区長が国交省に要望に行くとの説明に留まった。
(16時半~)羽田新飛行ルートに反対する市民・市民団体と、羽田議連メンバーは区役所に集まり、品川区のプレス発表を受けて今後の活動等について議論を交わす。
(17時半~)建設委員にも説明が無かった区長のぶら下がり会見が行われた。

アンケートに回答した区民・ルート直下の住民を置き去りにしたしたまま区長が国交省に要望書を持って向かう、との情報を掴んだ羽田新飛行ルートに反対する市民・市民団体、羽田問題議連しながわが急遽、緊急会合を開いた。手前に吉田ゆみこ区議会議員。撮影者:いながき孝子前区議会議員

■要望書を読み解く:品川区の要望書は、これまでの濱野区政の見解から一歩も出ず。「何も変わりが無い」

要望書では、”固定化回避検討会において、区民負担軽減につながる取組を、提示し実施いただくよう要望いたします。”とあり、この1点だけが要望されていますが、区民が求めているのは、即時中止であり、固定化回避検討会での検討継続ではありません。

また、”区民負担軽減につながる取組を、提示し実施いただくよう要望”してはいるものの、区として”いつまでに”という期限を迫っておらず、これではいつまでたっても①固定化回避検討会を続けることを区として容認していることになります。

さらに、②固定化回避検討会が継続する以上、固定化されたままの現状が続く。
ことから、この要望書には大きな課題があります。
危険と隣り合わせの新飛行ルートの固定化を先延ばしすることに寄与するに等しい愚行ではなかったか。区長・区は立ち止まって再考し、アンケート結果をもとに、区民との対話の場をこそ設定すべきです。

要望書の作成には、区のどのようなメンバーで、どのような会議体を何回開催し、どのような手続きを経て、この要望書に落とし込み、完成させたのか、これらを明らかにしていく必要があります。
また、何度も繰り返し知らせていますが、国の固定化回避検討会で検討されていることは、事実上、不可能なことばかりです。

その根拠・理由は、こちらのHP記事からご確認ください。
羽田新飛行ルート 固定化回避検討会の真実。固定化回避には白紙撤回しかない!

 

■羽田新飛行ルートによる被害状況

音を頼りに生きる視覚障がい者の方たちは、羽田新飛行ルートによる騒音で命の危険に晒されています。
音に敏感な発達障がい者や精神障がい者は、倒れてしまったり、落ち着かなくなる頻度が増えました。
乳幼児は大きな音に身体をビクッと反応させます。
子どもたちは勉強、部活動、遊び、スポーツ・習い事、休む時間等に「集中できない」と訴えています。
仕事や生活の中で騒音や、機体の大きさにストレスを感じ、なにより落下物事故がいつ起こるかと怖いなど、日常生活での心身への大きな負担を訴え、実際に身体を壊した方もいます。

市民生活に重大な支障を与えている現ルートは、撤回以外に解消の方法はありません。

区民アンケート実施期間中に、市民と品川・生活者ネットワークで行った遊説。ルート下に住む市民が羽田新飛行ルートによる被害を切実に訴えた

生活者ネットワークは、羽田新飛行ルート(案)が示された時から一貫して、明確に羽田新飛行ルートの即時撤回・中止を求めてきました。
私たち多くの賛同者、賛同議員らとともに区民の税金を活用し実施するのであれば、2万筆を大きく上回る区民の署名が集められた羽田新飛行ルートの賛否を問う区民投票の実施こそ、求めてきました。

どうしてもアンケートを実施するのであれば、羽田新飛行ルートに特化したアンケートを実施し、その際には、障がい者や、乳幼児を含む子どもへ、羽田新飛行ルートによる心身への影響を丁寧に聞き取ることが必要であり、その際には、介護者や保育者等の協力を得て聴取することを求めてきました。

しかし、それらの要望は全て叶いませんでした。

パフォーマンスでは無く、区民負担を無くすための現実的・実効性のある施策に舵を切るべき

品川区長は自治体の長であり、国の下請けではありません。区長が、第一に対話すべきは、国ではなく、ここに暮らす区民です。
品川区民は、安心・安全が保障され、平穏な日常生活を送れることができるまち・品川の実現を求めています。品川区には、国が強行した羽田新飛行ルートによる被害状況や困難状況にかかる意見は、すでに2022年6月時点で598件届いています(住民による行政資料開示請求による)。

森澤区長には、ただ今、すでにある被害状況を十二分に理解され、これらを解決するために尽力されたい、と生活者ネットワークは強く求めます。