第2回ネットサロン「地域減災に役立つ!!多様性配慮の視点」を開催
昨年10月に開催した第1回ネットサロン 「東京から送り出された満蒙開拓団と大陸の花嫁」(報告は品川ネットHP.2015.1103)に続き、今回「地域減災に役立つ!!多様性配慮の視点」というテーマで、減災と男女共同参画研修推進センターの共同代表で、早稲田大学地域社会と危機管理研究所招聘研究員の浅野幸子さんを講師にお招きし、9月14日に第2回ネットサロンを荏原第一区民集会所で開催しました。
これまで起きた大きな災害に浅野さんは出向き支援を行い、男女共同参画の視点で避難所運営の提案やしくみの構築等に尽力されています。そういった経験を踏まえてのお話いただき、地域での日頃の取り組みや政策提案にとても参考になりました。
かねてより品川・生活者ネットワークは、災害対策には多様性の視点、特に女性の視点が重要で欠かせないことを訴えてきました。
日頃の子育てや高齢者介護といった日常生活が、災害時の被災生活、避難所生活の延長線上にあります。避難所で発生する事細かな問題は日常の経験がある女性だからこそ対処できることが多くあるはずです。
いくつか挙げられた事例では、例えば避難物資を配布する人が男性ばかりだと女性の生理用品、乳幼児の紙おむつのなどなかなか相談できません。男性が相談されてもひるんでしまうでしょう。この子にはMサイズの紙おむつがほしいんですが、「紙おむつのサイズ??」ということになる。女性が同じ下着を長時間つけていると膀胱炎や膣炎といった病気も心配されますからるこまめに洗濯が必要です。でも干すところがなくて困る。
ではどうする!と考えた時、その場に、複数の女性がいればおむつのサイズの説明は省けるし、この教室を女性の着替えと洗濯干し場にしましょうとか、子どもが騒いでも良いスペースを体育館の一部につくって囲いましょうとかさまざまな日常の経験が活かせます。子どもが騒ぐので避難所に行けなかったという報道は私たちもたくさん見聞きしていました。
ちなみにこの会には1歳の男の子と3歳の女の子が参加しました。浅野さんは避難所では子どもがいるのが当たり前、今日のように子どもが騒ぐ中でずっと避難生活が続くということを想像してもらえて良かったと言い、どんどん騒いでいいですよと言ってくれました。実はうるさくて話が聞けなかったという苦情があるかなと少し心配していたので、ホッとしました。
浅野さんは「都市部での母子避難の問題」は大きな課題と警鐘を鳴らしていますが、国の防災会議などは工学系の男性が多く、こういった母子避難の課題が向け落ちているといわれました。国の「防災基本計画」は健康で経済力のある男性がつくってきたものとも指摘されました。ですが、2016年4月内閣府が発表した『避難所運営ガイドライン』には国際的には既に盛り込まれているのですが、やっと「女性や子どもへの配慮」が新しく盛り込まれるなど少しづつ改善されてきているとのことです。
例えば◆避難所運営には女性がリーダーシップを発揮しやすい体制をつくる◆避難所マニュアル作成時には多様な意見を取り入れ、女性の能力や意見を生かせる場を確保する◆女性・妊産婦に必要な物資・環境の確保、女性用更衣室・授乳室の設置、母子避難スペース・キッズスペースの設置の検討、性別配慮について意見が反映できる環境の確保。等々明記されています。
先述したように避難所で問題となってきたことが具体的に計画等に反映されてきたということです。これを自治体の施策に落とし込んで実態をつくっていくかが必要です。そして、具体的に取り組んでいる他自治体の取り組みも知ることができてとても参考になりました。
宮城県仙台市は女性が首長ですが、東日本大震災の時に、真っ先に指示したのはライフラインが復旧したらすぐに保育所を再開するようにということでした。発災直後の避難所設営は職員の方が中心になります。その時に子育て中の職員の動きをつくることもとても重要であるという認識があったとのことです。また避難所でも保育園が開所すれば、お母さんやお父さんが避難所の手伝いや自宅の片づけなどにも動き出せることになります。浅野さんは都市部においては母子避難への対応がとても重要であると指摘されました。品川区は就学前児童が増加していますし、核家族化・共働き世帯の増加も顕著で大きな課題であるという認識が行政には必要です。
参加者から浅野さんが示してくださった「男女共同参画の視点からの防災復興の取り組み指針」を確認しながら地域の防災に活かしていきたいとい、防災では男性講師が多いが、女性の話はまた違った視点で新鮮で良かった、地域で活かしていきたいなどさまざまな感想をいただきました。
安心して共に暮らせるまちづくりのために、防災についてのご意見、地域の課題など生活者ネットワークにお寄せください。
【ネットサロン】
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