品川区議会第2回定例会 吉田ゆみこが一般質問に登壇しました。

6月30日、この日の午前3番目に登壇した吉田ゆみこ。

品川区議会第2回定例会が始まりました。
6月30日(金)の午前中の3番目に登壇し、品川・生活者ネットワークを代表して一般質問に臨みました。

1.子どもの権利に基づく、児童相談所設置について

2.高齢者と障がい者グループホーム設置の考え方について

3.羽田新ルートに関して、羽田空港周辺振興協議会による助成事業応募について

質問本文はこちら(PDF)

以下、長文ではありますが本文にも掲載します。

2023.6.30
品川・生活者ネットワーク
吉田 ゆみこ

地域政党、品川・生活者ネットワークを代表して一般質問を行います。

Ⅰ:最初に、子どもの権利に基づく児童相談所のあり方について質問します。

子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)は、世界中すべての子どもたちがもつ権利を定めた条約です。すでに知られている通り、子どもの権利条約は1989年11月20日、第44回国連総会において採択されました。この条約を守ることを約束した国・地域の数は、現在196。世界で最も広く受け入れられている人権条約で、日本の批准は1994年です。

子どもの権利条約は、子ども(18歳未満の人)が自ずと権利の主体であることを明確に示しました。子どもがおとなと同じように、ひとりの人間として様々な権利を行使できる主体であることを承認するとともに、成長・発達の過程にあって、必要な保護や配慮が行き渡るよう、子どもならではの権利も定めています。

条約の採択は、世界中で子どもたちを取り巻く状況の改善につながってきました。

 

締約国の条約の実施状況をモニターする「国連子どもの権利委員会」のもと、条約の実施にあたり専門的な助言を提供したり、実施に向けた検討に参加したりする役割が与えられている唯一の機関に「国連児童基金=ユニセフ」があります。途上国などで実施する支援活動や、日本を含む先進国でのアドボカシー活動などを通して、条約の4つの一般原則を始め、条約に謳われている権利の実現をめざしています。

ようやく近年、認知度が高まってきた「子どもにやさしいまちづくり」事業も、ユニセフが掲げ推進する活動の一つです。当初は開発途上国での急速な都市化、人口増に対処する目的で始められ、途上国の地方部で暮らす人々が、経済的なチャンスを求めて都市部にやってきても、劣悪な環境に定住せざるを得ず、その影響は特に乳幼児を直撃し、生死にも関わるような状態になります。子どもにやさしいまちづくり事業は、こうした状況を改善する目的で始められました。

この事業が継続されると、今度は先進国の子どもたちの状況が懸念されるようになりました。言うまでもなく、開発途上国の子どもたちと比較すると、日本を含む先進国の子どもの居住環境ははるかに優れています。しかし、子どもの成長・発達は居住環境の補完だけでは十分ではありません。子どもが一人の人間として尊厳をもって扱われ、社会と関われてこそ、私たちの生活環境は持続可能となることがはっきりしてきました。こうしたことから、子どもにやさしいまちづくり事業は、今では開発途上国と先進国の両方で展開される活動になってきています。

 

おとなはともすると、子どもを受益者と位置づけ、子どもに対して善意を施すこと、つまり、助けてあげる、守ってあげる対象として子どもを捉え、これを“やさしい”としてしまいがちです。しかし、子どもを権利の「客体」として捉えることに加え、子どもを権利の「主体」として捉え、子どもが自身で考えていることや思うことを言える、聞いてもらえることで、自分に自信を持ち、社会への積極的な参加意識を促すことが、同じように大切です。子どもの権利行使を社会全体で承認し、支え、実現することこそが子どもにやさしいまちなのです。

 

2024年10月に品川区に開設予定の児童相談所も、子どもの権利条約に基づく子どもにやさしいまちづくりの一環として地域に存在することが必要と考え、以下質問します

 

Q1:児童相談所を設置するためには設置条例の制定が必要です。すでに準備段階にあると考えますが、現在の検討状況をお知らせください。

Q2:また、児童相談所を子どもの権利を保障する場として機能させるためには、充分な財政の裏付けと、人員確保が必要です。現時点での検討状況と、議会への報告はいつ頃と考えておられるか、お知らせください。

さらに設置条例制定の前に児童相談所設置の理念を表す根拠が必要と考えます。その理念とは当然「子どもの権利擁護」であるべきです。品川区も区立児童相談所開設に向けた計画書において、【児童福祉法の理念に則り、子どもの権利擁護について取り組む】と明記しており、さらには【子どもアドボカシー】として【子ども自らの意見・意向を表明しやすい体制づくりを図ること】を明言していることは承知をしています。

Q3:しかし、いよいよ「児童相談所」が現実のものとなる設置条例制定に向け、その理念を表すには、計画書への記載では、真(まこと)に不十分です。二元代表制の自治体の一方の責任を負う区議会がしっかり関与する条例であるべきと考えますが、見解を伺います。

Q4;児童相談所設置条例の前提となる、「品川区子どもの権利条例制定」が必要と考えますが見解を伺います。

Q5:条例制定にあたっては、条例の対象である子どもの権利を体現する手順が踏まれるべきであり、先ずは子ども自身の参加・意見表明権が保障されるべきと考えますが見解を伺います。

Q6:条例の策定にあたっては、当事者・子どもを真ん中にこれまで区の中で子どもの権利擁護の活動や、子ども・子ども家庭を支える活動を行ってきた市民、団体、子どもの権利にかかる豊富な知見を有する研究者らによって条例案が作られるべきと考えますが、見解を伺います。

 

子どもの権利を守る児童相談所とするためには、その理念を表す条例制定と共に、児童相談所の機能を補完する地域の社会的資源が必要です。その一つが子ども家庭支援センターです。

児童相談所は子どもの権利を守る存在であることは論を待ちませんが、一方で「子どもを家庭から引き離す存在」でもあります。子どもを守るためには引き離す=一時保護等が必要と判断された場合は、当然の措置ではありますが、同時に、子どもは地域で育つことを前提に、子どもと保護者が一緒に平穏に暮らせることをめざした家庭への支援が必要です。子ども家庭支援センターの存在が益々重要となると考え、これに期待するところです。

Q7:自治体によっては施設一体型ですすめるところもあると聞いていますが、品川区は児童相談所、子ども家庭支援センターがそれぞれ独立した機関として存在し、子どもの権利を真ん中に互いに補完し合う関係であるべきと考えますが、見解を伺います。

 

品川区には地域の社会的資源として、これまでも子どもたちの権利を様々な視点から実質的に守る活動を行ってきた団体(例えばおばちゃんち、チャイルドラインなど)、複数存在し、子ども若者応援ネットワークを形成して区とも連携した活動を行っていると承知しています。

Q8:こうした団体ともさらにネットワークを強くし、なおかつ新たな団体の登場を促す仕掛けも必要と考えますが、見解を伺います。

 

また、これまで品川・生活者ネットワークは区からも学校からも教育委員会からも独立した第三者的な立場で、子どもの相談を受け止め、共に解決(救済・回復)に向けて寄り添う第三者機関(子どもコミッショナー、または子どもオンブズパーソン)の設置を再三求めてきました。児童福祉領域を担う児童相談所の機能に加え、権利基盤型アプローチを前提に子どもに寄り添う、子どもの味方=子どもコミッショナー、または子どもオンブズパーソンの制度化が、今こそ求められていることは、昨今の品川の子どもを巡る状況が指し示しているのではないでしょうか。

Q9:品川発!子どもにやさしいまちづくりを推進するための地域の社会的資源として、「子どもの権利擁護を目的とする子どもの相談・救済機関」を設置すべきと考えますが、検討状況をお知らせください。

 

Ⅱ:2つ目の質問として高齢者と障がい者のグループホーム設置の考え方について伺います。

区長は、本年第一回定例議会の施政方針の中で認知症高齢者と障がい者のグループホームの定員を200名分増やすという方針を示されました。

暮らし慣れた品川区で、グループホームで生活したいと望まれる声は、品川・生活者ネットワークにも多く届いており、定員が増える方向性は歓迎しています。その方針をどの様に具体化されるのかという視点で質問をします。

最初に、区長は200人分のGH建設によって、これまで区内で様々策定された区の高齢者福祉計画・障がい者福祉計画に描かれた政策のうち、どのビジョンの実現を目指されるのか伺います。

これまで改定が重ねられている高齢者福祉計画や障がい児・者福祉計画においては、例えばグループホームや入所施設の増設が描かれたとしても、その実現のための具体策やロードマップが書き込まれないというご意見が聞こえてきます。その一方で、計画に描かれていない福祉施設などの建設が突然提案されることもあり、不足している施設が増えることは歓迎しながらも「障がい者団体や、福祉施設運営事業者、公募区民が参加して策定している高齢者や障がい児者の福祉計画を無視するような提案はいかがなものか?」という声を度々伺うのも事実です。

森沢区長は、品川区にとって初の民間出身の区長であり、その新鮮な視点での区政運営に期待が集まっているところですが、これまで様々な立場の区民が参加して改定を重ねてきた政策は尊重されるものと考えております。従って区長が施政方針で示されたグループホームの定員増についても高齢者については第八期いきいき計画21、障がい者については第6期品川区障害福祉計画、2015年に品川区長期基本計画のもとに位置づけられた品川区障害者計画などを踏まえたものと理解しています。

Q10:この度区長が打ち出された方針は、各計画で描かれたどの施策の実現を目指したものか、伺います。

 

次にグループホームの入居者増をどのように実現していくのか、具体的な考え方を伺います。先ほども述べましたが、グループホームで暮らしたいと望まれる方は多く、一方で定員を一気に増やすことは困難です。また、たとえ200人の定員を一気に増やせたとしても、全員のニーズを満たせるかどうかはわかりません。定員を徐々に増やしていく過程で、希望される方達の期待に添えない状況が生まれると考えます。その時になるべく不公平感が少ない入所者選定の方法が望まれます。入所の機会の公平性を求めて以下質問します。

まず、現状を理解するためいくつか質問をします。

Q11:現在、品川区にあるグループホームは、何施設あり、合計の定員は何人なのか?定員の男女比はどのようになっているか?高齢者・障がい者それぞれお答えください。

Q12:高齢者については胃ろうのケアにも対応するグループホームの数と定員もお知らせください。Q13:障がい者のグループホームでは、「一人では通所できず、日常生活の介助を必要とされる方」も入居できるグループホームの施設数と定員の数もお知らせください。

次に障がい者のGHを事例に質問します。

Q14:直近で入所者の募集があった障がい者のGH西大井つばさの家の募集人数は何人で、男女比はどうなっていたかお知らせください。そして応募者の人数と男女比についてもお知らせください。

 

次に募集が想定される出石のGHの入所者募集と入所者の決定の基準について伺います。

Q15:出石GHは何ユニットを想定されているのか、その男女比はどの様にお考えかお知らせください。

 

全ての人が公平な入居者選定であると感じられる制度は難しいかもしれませんが、できるだけ多くの人「ご自身やご自分のご家族にも入居の機会がある」と感じられるGHの整備と入居者選定の考え方が必要です。

例えば男女の入居の機会の公平性を例にとると、少なくとも区立、もしくは補助金を出すなど、区として関与している施設については、男女が公平に入居できるような選定を促すことが必要と考えます。

Q16:一つの施設だけでは公平の担保ができなくても、区の中でできるだけ男女の入居が平等になるような促しは可能と考えますが見解を伺います。

Q17:そのためには区内にGH運営事業者を誘致する際には、高齢者であれば介護度の高い方、障がい者であればより重度の方の入所が可能な施設運営の提案を区として行い、区の提案を受け入れる事業者へはある程度の財政支援も行うべきと考えますが見解を伺います。

 

障害者団体からも要望のある重度の障害者の入居が進まない理由に、施設職員数を増やせない、人件費の問題があると聞いています。また、2ユニットあっても男性のみの募集をすることも、夜間職員を複数人雇用できないからだとも聞いています。民間事業者の活用も必要ですが、民間のGHが増えても、軽度の障害者のみを対象としています。一方、区立GHは、入居希望者よりも事業者の意向を尊重する整備をしており、いつまでたっても重度障害者は入居できないと聞いています。事業者の経営的な都合で、重度障害者等が入居できなかったり、男女のユニットが偏ったりする課題を明確にして、入居を必要とする緊急性・重要性に応じた入居者選定により、

Q18:誰一人取りこぼすことのない公平な障害者GHの設置を求めますが見解を伺います。

 

障がい者のご家族からは、本来は身近な地域でGHには入れたら…と望みながらも数が足りないため、やむを得ず遠方の入所施設を選択せざるを得なかった、できるなら近くに戻ってきてほしいが、GHどころか入所の施設も足りない、という切実な訴えを伺います。また、もし遠方から戻ってきて運よくGHに入居できたとしても、日中の活動を行うための通所の施設も少ないため、GHとしての特性が活かせない可能性が大きいのが品川区の現状です。

Q19:GHの定員増の方針を打ち出すのであれば、当然GHの特性を活かすための地域資源としての通所施設を増やすことも方針化すべきと考えますが、現時点でのお考えをお聞かせください。

 

Ⅲ:3番目の質問として羽田新ルートに関して、羽田空港周辺振興協議会による助成事業応募について伺います。

品川・生活者ネットワークは羽田新飛行ルートについては計画当初より、反対を主張しつづけており、区に対しても、国に「反対」を表明するように求めてきました。

残念ながら現状では新ルートでの飛行は続いており、多くの区民は頭上から容赦なく降ってくる騒音に悩まされる日々を余儀なくされています。

音を頼りに生活している視覚障がい者の方たちの被害や音そのものを苦手とする発達障がい者の皆さんが被る被害は、だいぶ知られるようになりましたが、精神障がい者の方たちからも飛行機の音が精神の安定に悪影響があるというお声、聴覚障がい者の方達からは、「耳が聞こえないから関係がないと思わないで欲しい、振動によって音を感じる聴覚障がい者は飛行機の音による振動が不快である」というご意見をいただいています。

このように多くの方が被害者となっている羽田新ルートについて、品川区は「新飛行経路によって羽田空港国際線増便することと機能高度化を積極的に評価すること」が要件となっていると読み取れる羽田空港周辺振興協議会による助成事業に2020年に応募しており、品川・生活者ネットワークは品川区の羽田新ルートに対する姿勢について大いに懸念を持っております。

この助成事業への応募については今年3月の予算特別委員会で取り上げましたが、応募の考え方について改めて質問します。

Q20:最初に、この助成事業は、品川区のほかに、大田区・港区・江戸川区・川崎市が対象となっており、新ルートの航路下に当たる自治体に向けた制度と思われますが、対象となっている他自治体の応募状況は把握されているかお答えください。

次に、当助成事業についての議員への情報提供のあり方について伺います。

本年3月、品川・生活者ネットワークは予算特別委員会でこの助成事業に対する質問をしています。この助成事業ついての資料としてこの協議会による要項の提示を求めたのですが、理事者は「任意の協議会が所有する要項」であることを理由に提示しませんでした。独立した地方公共団体である品川区がきちんとした要項も示せないような助成金に応募することは考えにくかったため、改めて情報公開の手続きを取ったところ、2023年の募集要項が開示されました。きちんとした要項に基づいた手続きによる申請であったことが確認できたのは良かったのですが、一方で、委員会における議員の質問に対して、事実と違う答弁を行ったことについては怒りを禁じえません。このような答弁の姿勢は、議員本人だけでなく、その議員に行政機能をチェックする役割を付託した区民をも愚弄する行為です。

実は、この助成事業については2020年の予算特別委員会において、他の議員からも質問が出ております。その時の答弁は「この助成制度については、飛行が決定して飛行するからというところではなく、これまでも助成制度としてはあったものに、今回の新飛行ルートを契機として、応募してみようというところで助成制度を活用し始めたというところでございます。」ということでしたが、今回、要項を確認したところこれも事実と違います。

 

Q21:議員の質問に対する理事者のこうした姿勢は本来あってはならないことと考えますが、区長の見解を伺います。

 

また、開示された助成事業の募集要項の冒頭には助成の対象となる事業は「新飛行経路の運用開始に伴う羽田空港国際線増便・高度機能化を活用した様々な地域振興策や催事その他の事業に対し…」助成すると書かれており、羽田の増便や羽田空港の機能高度化することを前向きに評価することが大前提となっているように読み取れます。

これまで、濱野前区長は「羽田新ルートは品川区民にとってはマイナスしか降ってこない。」と言いつつも、「国の事業なのでやむを得ない」という態度を取り続けて国に対して「反対を明言すること」は避けてきました。しかし、この助成金に応募したということは、羽田増便を積極的に評価するよう転換したようにも感じられます。これはあってはならないことであると考えます。

Q22:森澤区長が就任されたのはこの助成事業に応募した後でありますが、改めてこのような趣旨の助成金に応募したことについて、区長のお考えをお聞かせください。

以上で一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。