「市民が提案する区庁舎機能」市民案を品川区濱野区長宛てに提出しました。

品川区の濱野区長に宛てて「市民が提案する区庁舎機能」市民案を提出しました。画面右から区長の代理で受け取ってくださった堀越企画部長、榎本総務部長、田中さやか、吉田ゆみこ、一緒に参加して意見を言ってくださった区民の方。

品川・生活者ネットワークは、品川区で進んでいる区庁舎の機能の検討に対して、「市民が提案する区庁舎機能」を文書にまとめ、2月8日濱野区長に市民案を提出しました。

市民案をまとめるにあたっては、既にご報告をしていますが、アンケートや講師を招いての講演会やワークショップなど様々な手法で意見募集や議論を重ねてきました。
生活者ネットワークは、区への要望や提案には、生活者ネットワーク区議の田中さやか吉田ゆみこや区民の方も一緒に参加していただいています。今回もご意見をくださったり議論に参加してくださった方たちに同席していただき、区長の代理で出席された、企画部長と総務部長に市民案を一緒にお渡しました。

さて、市民案の構成は、◆今、なぜ新庁舎機能の市民案を提案するのか?◆まず、課題の洗い出し、としてまとめ、その上で◎住民目線の利用しやすい区庁舎市民案を、テーマ別に列挙しました。
テーマ別の提案に共通して訴えたことは、一にも二にも市民参画が必要だということです。なぜなら、計画を検討しているみなさんは、他者を理解しようという気持ちがあっても、本当のところは当事者でなければ、分からないからです。しかしこれは、当事者参加で解決に向けての対応が可能です。

意見交換では、同席してくださった区民の方から、主に障がい者や高齢者などハンディのある立場への配慮についてと、検討には様々な立場の市民がかかわることについて意見を言っていただきました。

今後は、提案した市民案の各項目、そして何よりも多様な市民の参加が保障された上での、区庁舎の議論になっているか、しっかり注目し点検をしていきます。
そして、要所要所では品川・生活者ネットワークとしての発言もしていきます。
今後も、引き続き住民目線の区庁舎機能についてご意見をお寄せください。

以下提出した、市民案を掲載します。

品川区の新庁舎に求められる機能とは
~市民が提案する区庁舎機能~

今、なぜ新庁舎機能の市民案を提案するのか?
【2036年まで使用可能な現庁舎】
1968年建築の品川区庁舎については、2006年当時「建て替えか?耐震工事か?」の議論があり、様々な要因から「耐震化」の道を選択しました。2011年に耐震工事を完了し、品川区は2036年まで現区庁舎を活用するとしてきました。ところが2019年、区は突然移転・新築へと方針を転換しました。
この政策変換については理由が明確ではなく、変換が決まった議論の過程や手続きについても品川・生活者ネットワークとしては大いに異論があります。品川・生活者ネットワークとして実施した「区民が利用しやすい区役所を考える」のアンケートでも、「建て替えは不要、改修でよい」「耐震化のときに(建て替えは)検討しなかったのか」という意見もありました。政策決定過程のあり方は別途追及する必要があると考えます。
また、新型コロナウイルス感染症について未だ収束の気配もない中で、区庁舎構想を前のめりに推進するのではなく住民生活への財政支出を優先すべきです。大きな費用が発生する庁舎建て替えの事業を進めてよいのかという議論もおこなうべきです。

【形式的な区民参加で進む品川区の新庁舎機能検討議論】
しかし、品川区は2020年に「庁舎機能検討委員会」を発足させ、7月に第1回の会議を開いています。これまでにすでに3回の会議が開かれており、2020年度中に「新庁舎機能案」をまとめる予定です。公募委員として区民の参加もあるものの、全部で5回ほどの検討委員会開催では区民の参加も形式的なもので終わることが危惧されます。
また、現庁舎には多くの課題があることも確かです。アンケートやワークショップで多く意見が出されたのは窓口や来庁者の動線、案内表示の分かりにくさでした。品川・生活者ネットワークは、こうした課題の解決についても、利用する側の区民の意見こそ広く反映させる必要があると考えます。

【私たちの手で区民の意見を活かした「新区庁舎の機能案」を!】
区民の参加が保障されないままこれらの議論が進んでしまうことを生活者ネットワークとして座視するわけにはいきません。
そこで、いつ建て替え事業を実施するかの議論とは別に、「区の新庁舎機能案」の対案として品川・生活者ネットワークとして多くの皆さんからご意見を取り入れた「新庁舎の機能市民案」を作成し、品川区に提案をすることにいたしました。
まず、課題の洗い出し
【区役所へのアクセス】
アンケートでは不便という意見が多い。公共交通機関を使うにしても複数回の乗り換えが必要との意見が多数。また、駅から遠いという意見、駅からの道が狭くて歩きにくいという意見も。それが理由かどうかは不明だが、アンケートでは区役所に行くのは年に数回という回答が多く、ワークショップでは区役所にはほとんど行かないという発言が多かった。
【建物】
庁舎が3つに分かれており、複雑で分かりにくい。正面入口が3階なのが分かりにくい。入口が複数あるのは便利なようで、正面以外から入ると自分のいる場所が分かりにくい。アンケートからもワークショップでも同様の意見が多かった。
また、建物内に「区民が集える場がない」「ひと休みできる場所が欲しい」との意見があった。現庁舎の立地にも関係しているが、災害時の地下階や1階の浸水への懸念を指摘する意見もあった。
【窓口】
窓口についての意見では、職員の「対応」へも意見も色々あった。
「機能」としては、目的の窓口が分かりにくいという意見が多い。
【案内表示】
窓口と関連するが、これも「不親切」「分かりにくい」という意見が圧倒的。
【バリアフリー】
上記の「建物」「案内表示」の課題と通ずるが、バリアフリーが不十分。ワークショップで指摘があったのは、エレベーターが事故・災害などで止まってしまった場合、中にいる聴覚障がいの方は連絡のすべがないということ。

◎住民目線の利用しやすい区庁舎市民案
▶一にも二にも市民参画。とにかく市民参画!
敢えて冒頭にこれを掲げます。課題の洗い出しを行ってみて、これらを解決するには当事者参加で議論をしていくしかないとの結論に至ります。建物の分かりにくさや窓口機能の分かりにくさは、区役所内の議論でも指摘がされています。
問題は、その解決方法を職員の目線だけで考えてはいけないということです。また、一部の住民だけの意見でも問題です。様々な立場の人、例えば高齢者、障がい者、子連れで区役所を利用する人、外国の人…などがいるはずです。障がい者と一口に言っても障がいの種別や程度によって必要なバリアフリーは違ってきます。とにかく色々な立場の人がお互いの意見も聞きながら議論に参画する必要があります。

▶総合案内の機能の充実とわかりやすい案内表示
<総合案内>
・庁舎に入ったら一番目に付きやすい場所に全体の案内表示がある。
・視覚障がい者のためには言葉で耳から入る案内が必要。これからはAIの活用も検討されるべき。
・全体の案内表示に、車いすやベビーカー利用者のためにエレベーターの位置も分かりやすく示されている。
・行きたい窓口が50音順で表示され、その窓口が○棟の○階にあることが分かるようになっている。但し、高層ビルになった場合は分かりにくい可能性があり、別の工夫が必要。
・特別に配慮が必要な場合は、その窓口まで案内があると良い。
・自分の用事がどの窓口に行くべきかが不明な場合もあるので、総合案内で的確に教えてくれるコンシェルジュがいて欲しい。その場合は庁舎の配置や手続き内容に熟知した人が求められる。
・AIやタブレットの活用と人による対応で役割分担できると良い。
・総合案内には多言語対応と手話通訳機能が必要

<個別の案内>
・視覚障がい者にもわかりやすい案内が必要。
・晴眼者には廊下に導線による案内が有効だが、導線の色使いにも配慮が必要。
・ふりがな標記も必要。

▶窓口
<ワンストップ窓口>
よく事例として挙げられるのは、家族の死亡届の時、様々な窓口を回らなくても一つの窓口で手続きが済むようにできないかということ。
また、障がい者福祉の事例としては、「障がい者手帳交付」の問題がある。身体障がいの手帳交付は区役所、精神障がいの手帳交付は保健センターというのは当事者にとって分かりにくい。窓口はワンストップが望ましい。

<窓口の配置>
区民が多く訪れる窓口は1階に。例えば戸籍住民課、保育関係や福祉関係の窓口は1階がふさわしい。

▶建物の機能
<バリアフリー>
・視覚障がい者のための点字ブロック、車いすやベビーカー利用者・高齢者のための配慮などは大前提。但し、このそれぞれにとってのバリアフリーは互いに障壁となる可能性があるので、施工途中で当事者参加のワークショップが必要。
・床は滑りやすい素材は避ける。雨の日も想定した床素材が必要。
・庁舎機能全体に当事者参画による議論が必要だが、特にバリアフリーについては様々な障がい者・高齢者に参加を求める必要がある。
・総合案内の項にも記したが、多言語対応機能と手話通訳機能が窓口に必要。

<トイレ>
・女性用のトイレを多くする。
・多機能のトイレが必要。オストメイト対応、ユニバーサルベッドなど国際標準に合わせてバリアフリーをすすめる。
・トイレについては立場によって、求める機能が対立する可能性(例えば「誰でもトイレ」について)がある。
・多機能のトイレは広さが必要だが、視覚障がい者にとっては広いトイレは使いにくい。
・ひとくくりに多機能トイレとせず、いくつかのタイプのトイレがあると良い。
・トイレ内の配置(ドアを入ったらどちら側に便器やユニバーサルベッド、オストメイト対応の機能があるかなど)を区内統一にしてほしい。規格の統一は高齢者・視覚障がい者にとって分かりやすくなる。
・明かりは人を感知して自動で点灯されるものが良い。視覚障がい者でも明るさは分かる人もいる。しかしスイッチの位置は分からない。
・乳幼児のおむつ替え・チャイルドチェアを男性用トイレにも設置する。また、チャイルドチェアを設置した個室の鍵は、チャイルドチェアから手の届かない位置に設置する。
以上の点だけを考えても、トイレに特化した当事者参加による議論が必要。

<区民が集える場>
・区民が単に用事を済ませるだけの建物ではなく、区民が活用できるスペースが必要。普段は区役所を訪れた区民がひと休みしたり、順番を待ったりするスペースにも使える。
・閉庁日の窓口は閉まっていても、区民交流スペースとして使う。また、区内に災害があった場合には避難者を受け入れるスペースとしても使える機能を備えておくことが必要。
・アンケートにはカフェやレストランを求める声もあった。そういった場所も障がい者が就労の場とすることを可能とする。また、庁舎正面から入ったロビーに障害者福祉施設での作品展示や販売場所を常設する。

▶防災機能
区内防災全般の司令塔としての機能が第一に求められる。司令塔の機能のひとつとして東京都との連携機能が必須である。東日本大震災ではそれが機能しなかったという。前車の轍を踏むことはあってはならない。
避難所としての機能を併せ持つことが要求されるが、住民は基本的には地域の避難場所を活用し、帰宅困難となった人への対応とする。合わせて路上生活者も視野に入れるべき。避難者を受け入れるスペースは平時には区民交流スペースやイベント広場として使える機能を持たせる。
また現在、新庁舎の候補地となっている広町開発地域の場所は、土地が低いことから、区民から水害を懸念する声が寄せられている。これについては、土地の低さを逆手に取る考え方も検討すべき。例えば、地下は貯水池として雨水をためることを考えてはどうか。平時にはトイレの中水として活用し、大雨のときには下水に雨水を一気に流れ込ませないための貯留地として機能させる。
区庁舎として広町地区全体の調整池の役割を果たすことができるのではないか。

▶再生可能エネルギー導入と雨水活用
再生可能エネルギーの導入は大前提とする。国や東京都の方針、また品川区の環境基本計画もすべてCO2削減を掲げている以上、当然である。
着目すべきは、どういう再生可能エネルギーであるかを確認することである。
例えば木質バイオマスといっても、その原料が輸入の木質ペレットであったり、パーム椰子殻であるなら、原料調達の過程で大量のCO2を発生させており温室効果ガス削減の観点からは問題が大きい。また、安易にパーム椰子を使うことは環境破壊につながるという問題もある。再生可能エネルギーの原料も常に公開されるべきである。
また、雨水を中水として活用することは大雨の際の防災につながり、品川区の防災への姿勢を示す観点からも導入すべきである。