今回の制度は「一般市民の感覚や社会常識が裁判内容に反映され、結果、市民の司法に対する理解と信頼が深まる」という理念のもと、司法の中核ともいえる訴訟手続きに市民が参加し、裁判官とともに裁判内容の決定に実質的、主体的に関与するものだ。
しかし、各種世論調査では国民の70%近くが「できれば参加したくない」と回答しているように、制度への理解・共感は進んでいるとはいえない。さらに、司法状況の課題として、「被告人の防御権を保障した刑事手続きの確立」ーたとえば、新設された証拠開示制度や被疑者段階からの国選弁護制度などが適切に運用されること、取調べ過程の可視化(録画・録音)などの改革が実現されなければならないだろう。また、国民への情報提供、誰もが参加しやすい環境整備、守秘義務範囲の明確化などの課題も山積だ。
このような状況で実施してもよいのだろうか。市民の意識を啓発する法教育や人権教育の定着が先決で、はじめに制度の導入ありき、という形で真の司法の民主化が実現するのか、今後を見守っていかなければならない。(ネットニュース№62より抜粋)掲載写真は8月に開催された日弁連主催の「第1回高校生模擬裁判選手権」の模様