「このゆびとーまれ」講演会 開催

品川地域協議会の主催で、小規模多機能のケアハウス「このゆびとーまれ」を運営している惣万佳代子さんを富山からお招きし、講演を聴くことができました。

「このゆびとーまれ」は赤ちゃんからお年寄りまで、障がいがあってもなくても、みんなが集い過ごすことのできる場所として、今から12年前、惣万さんら看護士経験者3人が設立した民間施設です。「どうして畳の上で死なれんがけ?」と訴えるお年寄りの言葉をきっかけに、当時すでに病院での看護の限界を痛感していた惣万さんたちは、経済的な心配を抱えながらも熱い思いだけで、実現にこぎつけたそうです。

最初の利用者は3歳の障がい児をもつ若い母親でした。子どもを預け美容院に行く「預け先があるだけで夢のよう」という障がい児の家族の現実がそこにありました。以来、地域のニーズに応え、「いま困っている人を支援する」をモットーに続けてきた活動が、富山方式と呼ばれ、国の制度も動かし全国に広がってきています。
「ひとつ屋根の下に大家族が暮らす日本では普通のことだったのに」と惣万さんは言います。認知症のお年寄りが赤ちゃんを見て笑顔であやしたり、障がいがあってもスタッフとして働き頼られる。誰かの役に立ち自分の存在を認めてもらえる場がだれにとっても必要です。

いま、安心のまちづくりが求められていながら、一方で所得格差や競争社会の激化によって高齢・障がい・失業・病気など、将来への不安が高まっています。私たちがどんなまちで暮らしたいか、どんな生き方をしたいのか、そのために力を合わせて動き出すことができるか、「このゆびとーまれ」の実践からは、たくさんの問いが投げかけられました。そして何よりも惣万さんのおおらかさと強い意志が、私たちに勇気を与えてくれた講演会でした。