12月25日 臨時議会のご報告

201227臨時号 確定のサムネイル昨年末に行われた品川区の臨時議会について、大変残念な結果となりましたが、ご報告をいたします。

区民投票条例案は12月11日、「区民投票を成功させる会」の請求代表者により本請求され、それを受けた区長は4項目の理由による反対意見を付して、議会を招集しました。

25日に開かれた臨時議会では冒頭、請求代表者11人の内5人の方から意見陳述がありました。意見では区長の反対理由にももっともな点があることを認め、その点については区議会によるしかるべき修正も認めること、とにかく自分たちに意見表明の機会を与えて欲しいことなどが切々と訴えられました。

その後、条例案の審査が建設委員会で行われました。委員の一人から区長意見を反映させた修正案の提出があり、修正案と修正部分を除いた原案の両方について議論が行われた結果、両案とも賛成多数で可決、ところが、その後の本会議では自民・公明会派の議員の反対により、18対21で逆転否決されてしまいました。
(各議員の採決結果は品川・生活者ネットワーク臨時号(2020.12.27)に掲載しています。ご一読ください。)

採決に先立ち、条例案に賛成、反対それぞれの議員の討論が行われました。
賛成する立場からは6人の議員の討論があり、品川ネットからは吉田ゆみこが討論に立ちました。6人の討論に一貫していたのは、地方自治法上の直接請求の権利は尊重されるべき、地方自治体の区議会が区民の権利を奪ってはならないという当然の主張です。

一方、反対議員3人の討論は、区民の直接請求は尊重するとしながら区長と同様の反対理由のほか、「区民投票の結果には法的拘束力がなく無意味」という耳を疑うような反対理由が述べられました。区長や自公議員は条例案への反対理由として「区議会が決議を挙げている」ことや「すでに区長が国へ意見を言っている」ことを挙げています。しかし、これらにも国への法的拘束力はありません。法的拘束力だけに意味があるというなら、自分たちが「やっている」と胸を張っている行動もすべて無意味となり、完全に自己矛盾を起こしています。

そもそも羽田新ルートは国が「地元の同意を前提」としながら、国も品川区も一向に区民意見を問わない現状に対し、区民自ら「それなら自分たちで意見を言う場を作ろう」と動いたものです。市民が正式な手続きで「意見を言う場を作る」には、直接請求という大変厳しい要件が求められる手段しかありません。そしてこの度、地方自治法が定めるその厳しい要件をクリアし、直接請求された区民投票条例案を「結果に法的拘束力がない」と自・公会派は否定したのです。そうであるならば、今後、生活者ネットワークとしては区民の皆さんと共に「法的拘束力のある区民意見集約」の方法を厳しく追及していかねばならないと考えています。

吉田ゆみこが生活者ネットワークを代表して賛成討論を行いました。

以下、賛成討論

品川・生活者ネットワークを代表して、第99号議案 羽田新飛行経路の運用の賛否を問う品川区民投票条例に対する修正案と、修正部分を除いた原案へ賛成の立場で討論します。

本条例案は、羽田新飛行経路に対しての賛否を明らかにするための区民投票を行うための条例です。
区民の皆さんは区民投票を行うために、地方自治法第74条1項に定められた直接請求という制度を使いました。これは国民に等しく保障された自治のための権利ですが、権利行使の要件は大変厳しく定められています。署名集めの期間は市区町村の場合は一カ月だけ、その間に区内の有権者の1/50の署名を集める必要があります。しかも署名集めができるのは受任者として署名簿に自分の住所氏名生年月日を明記した人のみです。署名も、生年月日の記入や捺印まで求められ、集められた署名簿は選管による有権者の署名か否かの審査を経なければいけません。
法的要件の他、署名簿の準備にかかる経費など市民運動としては大きな負担も覚悟しなければなりません。
私自身、かつて東京都に対する直接請求に請求代表者の一人として携わった経験がありますが、この要件の厳しさを前提に直接請求運動に取り組もうという決意自体大変重いものでした。今回の請求代表者の方たちの決意も大変重いものであったろうということは容易に想像ができます。

 

そもそも羽田新飛行経路の実施について、国は「地元の同意を前提とする」と、繰り返し明言してきました。新飛行経路の直下にあたる品川区民は、「地元の同意」とは自分たちの同意のことであると信じ、いつか「同意か否か」を問われる機会があると思っていました。本日冒頭の意見陳述で紹介された子育て中のお母さんのように、「こんな危険な計画は実行されるはずがない、そういう意見を言う場があるに違いない」と信じてこられたと思います。
ところが、その期待は裏切られ、一度も意見を言う機会がないまま「地元の同意は得た」として新飛行経路は強行されてしまいました。国が意見を聞かないのであれば、区民として意見を言う場を設定しようではないか、として行われたのが今回の区民投票条例制定のための運動です。
つまり、本来は国が行うと明言してきた「地元の同意を確かめる場」を、区民自らが設定しようとしているにすぎません。それを実現するための公の手段は直接請求しかなく、厳しい要件は承知の上で取り組まれたのだと推察します。
これは、まさに住民自治の行動であり、地方自治体の区議会は区民の自治の行動は尊重すべきと考えます。しかも現在の品川区における法定の最低署名数6802筆の3倍を超える署名が集まったという事実は区議会としても重く受け止めるべきと考えます。

第99号議案原案にはいくつかの課題があることも確かです。しかし、その点の不備について請求代表者の意見陳述の中でも認めておられ、議会の中からもその点含めた修正案が出されました。
区民の一番の願いは、羽田新飛行経路について自ら賛否を明らかにする場が実現することです。この願いの実現を第一に考え、修正案と修正部分を除いた原案に対し賛成することを皆さんに呼びかけて生活者ネットワークの賛成討論といたします。